キャリア・カウンセリング、ガイダンス そしてコンサルティングへ

第8回 キャリア・カウンセリングの実際(その1)

―― システィマティック・アプローチ――

I キャリア・カウンセリングのカウンセリング・プロセス

要 約

キャリア・カウンセリングにやり方もいろいろあるが、古くから行われてきた最も代表的なアプローチが「システィマティック・アプローチ(systematic approach)」である。
 システィマティック・アプローチに共通している流れは。カウンセラーとクライエントの間によい人間関係(ラポール、リレーション)を作り、、共同してカウンセリングの目標を定め、計画を立て、その計画を達成するための方策を定めてそれを実行し、最後に結果を評価し、クライエントのフォローアップを行うというプロセスをとる。

このようなプロセスをとるカウンセリングには、アイビー(Ivey,A.E.)の「マイクロカウンセリング(microcounseling)、カーカフ(Carkhuff ,R.P)の「ヘルピング(helping)」、あるいはこれらの手法を統合的に取り込んだ国分康孝の「コーヒーカップ方式」などが広く使われている。
 「システィマティック・アプローチ」は、これらの中で特に職業相談、進路相談、雇用相談、キャリア相談として使われてきたものである。ここではピューイ(Peauy,V.)の「雇用カウンセリングの体系的アプローチ」、を参考にしながら、まず、アプローチの流れを照会する。

システィマティック・アプローチは、要約すれば、次のようなプロセスをとるのが普通である。

① カウンセリングの開始 

カウンセリング関係を樹立する。温かい雰囲気の中で、クライエントが安心して話のできる信頼関係を樹立する。

② 問題の把握

来談の目的、何が問題なのかを明確にする。問題にはクライエントの問題とカウンセラーが認識する問題が違う場合がある。それを両者が相互に共有し、確認する。
 共有した問題の解決のためにカウンセラーとクライエントが行動する意思を確認する。

③ 目標の設定

解決すべき問題を吟味し、最終目標を決定する。そのプロセスは、まず、クライエントに悩みや阻害要因に気付かせる。次に具体的ないくつかの方策を選択し、それを一連の行動ステップに組み立てる。契約を結ぶことによってクライエントのコミットメントを確かにする。

④ 方策の実行

選択した方策を実行する。主な方策は、意志決定、学習、及び自己管理である。

⑤ 結果の評価

実行した方策とカウンセリング全体について結果を評価する。クライエントにとって方策は成功したか。カウンセラーはやるべきことをやったか。目標は達成したか。ケースを終了してよいか。

⑥ カウンセリングとケースの終了

カウンセリングの終了を決定し、クライエントに伝える。成果と変化を相互に確認する。クライエントが了解すればケースを終了する。問題があれば再び戻って来れることをつげる。カウンセラーは、ケース記録を整理し、完結する。

システマティック・アプローチの流れ

II システィマティック・アプローチの重要なステップ

1 目標の設定

(1)目標設定の意義

カウンセリングが進行する最初にカウンセラーとクライエントが共同作業で目標を設定することはシスティマティック・アプローチの重要な特徴である。
 なぜ重要なのか。それは次のような意味があるからである。

① 目標の設定は、クライエントが自分の考えを方向付け、最終目標に向かって行動するのを援助する。

② 目標が明確に宣言され、かつ到達可能であるとき人を最も動機付ける。人は目標に近づけば近づくほど努力する。

③ 目標設定によって、目標に照らしてカウンセリングの進展を客観的に測定、評価できる。

④ 目標設定によって、カウンセリングを計画的、合理的に進めることができる。人間関係の質を高めるなどの抽象的な目標のために、カウンセリングをだらだらと長期間にわたって進める危険を少なくできる。

(2)目標設定のステップ

【ステップ1】

目標を、具体的なターゲット(target)として表現してみる。
 具体的で小さなステップごとにカウンセリングを進めることによって、クライエントは早い段階から成功感を味わえる。進捗状況を知ることができる。

【ステップ2】

カウンセラーは、このケースを扱えるかどうか検討し、決定する。
 すべてのカウンセラーは万能ではない。目標設定のプロセスの中で、カウンセラーは自分はこのクライエントの支援者として最適かを検討し、その結果をクライエントに伝える。
 不適の時は他のカウンセラーや関係機関にリファーする。

【ステップ3】

クライエントが自分と一緒に、目標を達成しようとしているか確認する。
 クライエントはターゲット達成をどれほど望み、努力しているか。ターゲット達成のメリット、デメリットはなにかなどを相互に確認する。

【ステップ4】

確認が得られたら「行動契約」を結び、契約書を取り交わす。
 契約書の内容は、それに至るプロセスとそれを実行する内容である。

【ステップ5】

各ステップのチェックをする。
 最終段階として次の点をチェックする。

① クライエントは、充分ターゲットを理解したか。

② カウンセラーは、クライエントとともに努力したい意向を充分に伝えたか。

③ クライエントは意欲に欠けていないか。

④ ターゲットと契約の内容について、カウンセラーとクライエントは同じように理解したか、共有しているか。

2 方策の実行

(1)方策の決定

方策とは、カウンセリングの目標を達成するための行動計画(action plan) のことである。目標達成のためのターゲットを決め、それに達するステップと具体的な行動を見つけそれを実行することである。
 方策の実行は、システィマティック・プロセスの中でも中核をなす。それだけに個人によって異なった対応の必要な部分である。方策の実行に入る前に次の点を自問自答し確認する必要がある。

① クライエントの欲求を一つ一つターゲットとして表現するの助けたか。カウンセラーとしてその知識、技能を持っているか。

② カウンセラーとして、このケースにふさわしくないと考えた場合、適切な個人や機関にリファーしたか。

③ 採択した方策は、クライエントの欲求、現状、諸条件等に照らして最適か。他の可能性はないか。

④ 方策の内容、進め方をクライエントに充分に説明したか、クライエントはそれを理解したか。

⑤ 各ステップは明確か。クライエントがするべきこと、責任は、それは実行可能か。

⑥ クライエントの考えを尊重し、積極的役割をとらせたか。

(2)方策の実行

方策の実行は、一般に次の6つのステップを踏んで行う。

① 可能性がある方策をいくつか考え、メリット、デメリットを比較検討して一つを選ぶ。

② 方策実行のプロセスを、クライエントに説明する。
 方策の内容、目的、原理、プロセス、結果、利点と損失、必要な諸活動などを説明する。

③ クライエントに合うように方策を変更する。

④ 方策を実行し、達成するためにカウンセラーとクライエントが「契約」を結ぶ。
 これは、具体的な行動、すなわち個々の方策を行うことを約束することである。
 必要があれば、それを文書にした「契約書」を取り交わす。

⑤ 決定、採択された方策をクライエントが自分の責任で実行する。カウンセラーも自分の役割を実行する。

⑥ 方策全体を行ったかどうか。方策の実行全体をチェックする。

(3)システィマティック・アプローチにおける情報の提供

進路相談、職業相談、キャリア相談、キャリア・コンサルティングにおける職業情報の重要性についてはすでに述べた(本シリーズ第6,7回参照)。ここでは方策の実行との関連でのいくつかの留意点を述べる。

① 決まり切った方法では入手できない情報の提供

情報提供の原則は、カウンセラーが情報そのものを提供するよりも、クライエントが情報をうる方法を教えることである。情報を探し、選択し、それを活用するのはクライエント自身である。カウンセラーはそれを確認することである。
 また、情報の提供は、単に口頭で示すよりも、例えばクライエント自身に書かせるなどクライエント自身の責任と行動で体験させるのがよい。

② 将来利用できる方法の提供

今すぐ利用できる情報そのものよりも、将来そのようなことに遭遇した場合、活用できる方法の情報の提供である。この場合カウンセラーは、情報を提供しない。どうしたら情報を得られるかを提供する。

③ クライエントのニーズ、期待、予想に反する情報の提供

クライエントにとって否定的な情報は、一般にクライエントに受け入れられにくい。
 例えば、就職を困難にしている習慣、観念、性格など、求人条件の間違った固定観念、高すぎる期待などの非現実性をクライエントが持っている場合である。
 このような場合は、クライエントに自己学習をさせるのがよい。カウンセラーは一般情報を与え、クライエントは、それを基にして自分の期待内容等を再評価し、現実に合わせさせるのである

《引用・参考文献》

1 木村 周「キャリア・コンサルティング 理論と実際」 2010 一般社団法人雇用問題研究会

2 Canada enployment and immigration commission 1986 Individual employment counselling-Systematic approaches(雇用職業総合研究所訳による)

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