第10回 これからのキャリアコンサルティングは何をすべきなのか
本シリーズの最終回として、これからのキャリアコンサルティングは何をすべきなのか、残された課題についてその要点を述べたい。
結論から言うと、「いつでも、どこでも、誰でもが学べ、やり直しがきき、かつその人らしく生きることができる社会の実現」に、キャリアコンサルタントは実力を発揮し、貢献すべきである。
以下、そのために残されたいくつかの課題を述べる。
1 雇用の場の確保と現場力の確保
伝統的にキャリアカウンセリング、キャリアコンサルティングは、「結局は個人を対象とした支援だからその範囲内で、それに徹すればいい。問題は雇用問題であって、コンサルタントの仕事ではない」という考えが、我々のどこかにありはしないか。
キャリア・カウンセラーやコンサルタントは、先頭に立って組織や社会を変えるという立場に立って行動することである。
「企業は人なり」「現場主義」「改善」は古くから我が国の働く人、職場の基本的立場であった、今こそそれを実現すべきである。
2 障害者、高齢者、メンタルヘルス不全者など特別に支援を必要とする人たちへキャリアコンサルティングを広めること
うつ病をはじめとして精神障害者などの支援は社会的問題となっている。
従来、カウンセラーの中には、「治すカウンセリング」と「育てるカウンセリング」を、理論的にも実践的にも峻別する傾向があった。しかし、今日はそれでは問題の解決には至らない。その連携が理論的、実践的にも求められている。
働く人に関わる雇用対策においても、労働基準法、労働安全衛生法、失業者等の関わる職業安定法、職業能力開発促進法など多様な分野があるが、キャリアコンサルティングはそれらすべてに関わらなければならない。自身の知識とスキルの幅を広げながら、それぞれの分野の専門家同士で連携していくことが求められている。
3 支援者として官民を超えた「公」の視点を自覚し、「労働の人間化」と「快適職場づくり」に貢献すること
「公」の視点で、現場で働く人を支援するキャリアコンサルタントは、個人と組織の真ん中に立って「労働の人間化」とその結果としての「働く人にとって快適な職場づくり」に貢献することである。「労働の人間化」では、働くことが次のような内容を満たす必要がある。
① 労働の内容に手応えがあること。単に忍耐を要するだけでなく、適当な変化があること。(変化)
② 仕事から学ぶことがあること。継続的に妥当な量の学習があること。(学習)
③ 自分で判断の余地があること。自分の責任で考え、決められること。(自立性)
④ 人間的なつながりがあること。同じ職場の人々が互いに他人を認め合う関係にあること。(他人との協力関係)
⑤ 仕事に社会的意義があること。自分の労働と社会をつなげて考えられること。(社会的意義)
⑥ 将来にとってプラスになること。なんらかの意味でよき将来につながること。(成長)
《引用・参考文献》
木村 周「キャリアコンサルティング 理論と実際(5訂版)」 平成30年10月(一般社団法人雇用問題研究会)