キャリアコンサルティング ―その過去、現在、未来―

第4回

「キャリアコンサルティングの包括的な推進、効果的な実施にかかる能力」と「キャリア・ガイダンス、カウンセリング、キャリアコンサルティングに必要な実践上の能力」

第1回から第3回まで、「キャリアコンサルティングに必要な能力」について、厚生労働省が示した「キャリアコンサルティング実施のために必要な能力体系」について3つの側面から解説してきた。
 今回は、その4番目の側面「キャリアコンサルティングの包括的な推進、効果的な実施にかかる能力」と、別の側面から見た「キャリア・ガイダンス、カウンセリング、キャリアコンサルティングに必要な実践上の能力」について解説する。

1 キャリアコンサルティングの包括的な推進、効果的な実施にかかる能力

(1)キャリア形成、キャリアコンサルティングに関する教育・普及活動

個人や組織のみならず社会一般に対して、様々な活動を通じてキャリア形成やキャリアコンサルティングの重要性、必要性等について教育普及することができること。
 また、それぞれのニーズを踏まえ、主体的なキャリア形成や支援に関する教育研修プログラムの企画、運営をすることができること。

(2)環境への働きかけの認識と実践

個人の主体的なキャリア形成は、個人と環境(地域、学校、職場等の組織、家族等、個人を取り巻く環境)との相互作用によって培われることを認識し、環境(例えば学校や職場の環境)の問題点の発見や指摘、改善提案等の環境への介入、環境への働きかけを関係者と協力して行うことができること。

(3)ネットワークの認識と実践

1)ネットワークの重要性の認識

個人のキャリア形成支援を効果的に実践するためには、行政その他の専門機関や専門家との様々なネットワークが重要であることを認識していること。

2)ネットワークの形成

ネットワークの重要性を認識したうえで、関係機関や関係者と日頃から情報交換を行い、協力関係を築いていくこと。

また、個人のキャリア形成支援を効果的に行うことができるよう専門機関や専門家と共同して支援することができること。

3)専門機関への紹介(リファー)の実践

個人や組織の様々なニーズ(メンタルヘルス不調、発達障害等)に応える中で、適切な見立てを行い、キャリアコンサルタントの任務の範囲、自分の能力の範囲を超えることについては、必要かつ適切なサービスを提供できる専門機関や専門家を選択し、相談者の納得を得たうえで、紹介あっせんできること。

4)異なる分野の専門家への照会(コンサルテーション)

個人のキャリア形成支援を効果的に実施するため、必要な追加情報を入手したり、異なる分野の専門家等に意見を求めることができること。

(4)自己研鑽・スーパービジョン

1)自己研鑽

キャリアコンサルタント自身が、自己理解を深めること、能力の限界を認識すること。常に学ぶ姿勢を維持し、継続学習により新たな情報を吸収し、自分の力量を向上させること。

特に、キャリアコンサルティングの対象は、常に人間であることから、人間理解の重要性について十分に認識していること。

2)スーパービジョン

スーパービジョンの意義、目的、方法等を十分に理解し、スーパーバイザーから定期的に実践的助言・指導(スーパービジョン)を受けることの必要性を認識していること。

また、スーパービジョンを受けるために必要な逐語記録等を整理していること。

(5)キャリア形成支援者としての姿勢

キャリアコンサルティングは、個人の人生に関わる重要な役割、責任を担うものであることを自覚し、キャリア形成支援者としての自身のあるべき姿を明確にすることができること。

また、キャリア形成支援者として、自己理解を深め、自らのキャリア形成に必要な能力開発を行うことの必要性について、主体的に理解できること。


2 キャリア・ガイダンス、カウンセリング、キャリアコンサルティングに必要な実践上の能力

キャリアコンサルティング実施のために必要な能力は、行政上「その能力体系」として明示されている(本シリーズ第2回、第3回、第4回1で解説した)。

しかし、実際の実施に当たってはキャリア・ガイダンス、カウンセリング、キャリアコンサルティングがばらばらに行われるのではなく、一体となって行われる。現場において実践上必要な能力について、以下私見ではあるが、とりまとめておきたい。

(1)一般カウンセリング(general counseling)

・カウンセリング一般に関する理論、知識(いわゆるカウンセリング・スキル)

・キャリア発達に関して個人を効果的に援助するスキル(キャリア・ガイダンスの実施過程において必要なスキル)

・キャリア発達に関連する内的、外的要因を認識させるスキル(キャリア・ガイダンスの社会的意義の理解、組織への対応など)

(2)情報(information)

・雇用、労働市場、求人事業所と労働条件、能力開発に関する情報等と情報源に関する知識、収集のためのスキル

・キャリア、キャリア・ガイダンス、キャリア・カウンセリング、キャリアコンサルティングに関する基本的概念の知識、定義

・職業選択、キャリア発達、意思決定のスキル

・職業やキャリア情報とスキル(コンピュータによるキャリア・ガンダンスを含む)

・特別な支援を必要とする人に対するキャリア・ガイダンス、カウンセリング、キャリアコンサルティングに関する知識、スキル(障害者、一部の女性、高齢者など)

(3)個人とグループの評価(individual group assessment)

・適性、能力、興味、価値観、パーソナリティに関する評価スキルと測定に関するスキル

・個人と職業をそれぞれ評価し、それに対するキャリア・ガイダンス・プログラムの有効性を評価する知識、スキル

・個人とグループに関する評価データを収集、蓄積、検索、解釈し、それをクライエントに伝える能力

(4)管理・運営(management administrations)

・キャリア・ガイダンス、カウンセリング、コンサルティングのニーズの把握、目標の設定、計画の策定、具体的方策の設定、それらの計画に関する知識、スキル

・キャリア・ガイダンスを実践するに当たっての管理及びリーダーシップを有効に行うための知識、スキル

・計画や方策を行うための予算、スケジュール、運営、結果の評価、関係部門への報告などの知識、スキル

(5)実施(implementation)

・プログラムの決定、採用、計画変更に関する知識、スキル

・プログラムの実施に影響する個人的、環境的障害についての知識、スキル

・キャリア・ガイダンスの実施に当たって対外的交渉を行う能力

・多様かつ包括的資源センターを構築し、利用させる能力

・多様なパイロットプログラムを実施する能力

(6)コンサルテーション(consultation)

・コンサルテーションに関する戦略、そのモデルを構築する能力

・関係の専門家、専門機関等の個人、組織等をクライエントに照会する能力

・キャリア・ガイダンスとカウンセリング、キャリアコンサルティングの費用と効果のデータをクライエントに提供する能力


《引用・参考文献》

木村 周「キャリアコンサルティング 理論と実際(4訂版)」 平成28年5月(一般社団法人雇用問題研究会)

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