第9回 第10次職業能力開発基本計画の策定
厚生労働省は4、5年ごとに、国の職業能力開発の基本計画について法律に基づきその方針を公開してきた。キャリアコンサルティングが職業能力開発促進法の大改正によって開始された平成13年には、第7次職業能力開発基本計画が制定された。
その内容は、労働力需給調整の強化、キャリア形成の促進のための支援システムの整備、職業能力を適正に評価するための基準、仕組みの整備、職業開発に関する情報収集、提供体制の充実強化、能力開発に必要な多様な教育訓練機関の確保であった。
この方針は現在でもその基本は変わらない。しかし、時代の変化とともに重点の置き方、具体的な内容などが変化して現在に至ってきた。
そのため、平成28年4月「第10次職業能力開発基本計画(生産性向上に向けた人材育成戦略)」が策定され、現在に至っている。本連載(第9回)では、その内容の要点を紹介する。(詳細については巻末引用文献を見られたい)
1 第10次職業能力基本計画のポイント(職業能力開発の方向性)
以下、スペースの都合上その項目だけを示す。
① 生産性向上に向けた人材育成の強化
② 「全員参加の社会の実現加速」に向けた職業能力底上げの推進
③ 産業界のニーズや地域の創意工夫を活かした人材育成の推進
④ 人材の最適配置を実現するための労働市場インフラの戦略的展開
⑤ そのほか、技能の振興、国際連携・協力の推進(技能評価システムの移転、職業訓練の実施の支援、技能実習制度の適正かつ円滑な推進)に関する施策を実施するとともに、この計画に基づく施策推進の目標を設定し、その進捗状況を把握する。
2 職業能力開発の方向性
第10次職業能力開発基本計画では、前記基本計画に基づき職業能力開発の方向性について、下記4項目を挙げている。
① 生産性向上に向けた人材育成の強化
② 「全員参加の実現加速」に向けた女性・若者・中高年齢者・障害者等の個々の個々の特性やニーズに応じた職業能力底上げの推進
③ 産業界のニーズや地域の創意工夫を活かした人材育成の推進
④ 人材の最適配置を実現するための労働市場インフラの戦略的展開
3 職業能力開発の基本的施策
第10次職業能力開発基本計画は、期間中の基本施策を6項目挙げているが、ここではスペースの関係でその項目だけを挙げる。
① 生産性向上に向けた人材育成の強化
IT人材育成の強化、ITの潜在力の発揮、労働者の自発的なIT技術習得の支援、専門実践教育訓練給付金制度、労働者の主体的なキャリア形成の推進、企業・業界における人材育成の強化など
② 「全員参加の社会の実現加速」に向けた女性、若者、中高年齢者・障害者等の個々の特性やニーズに応じた職業能力底上げの推進
女性の躍進促進に向けた職業能力開発、若者の職業能力開発、中高年齢者の職業能力開発、障害者職業能力開発校における受け入れ促進、障害特性に配慮した職業職業訓練機会の提供、非正規雇用労働者の職業能力開発など
③ 産業界のニーズや地域の創意工夫を活かした人材育成の推進
④ 人材の最適配置を実現するための労働市場インフラの戦略的展開
中長期の人材ニーズを踏まえた人材育成戦略、産業界や地域のニーズを踏まえた公的職業訓練等の実施、対人サービス分野を重点とした技能検定の整備、認定社内検定の普及促進、ジョブ・カードの活用促進、企業における人材育成投資の促進
⑤ 都道府県労働局の機能強化
⑥ 技能の振興(内容省略)
⑦ 職業能力開発分野の国際連携・協力の推進(内容省略)
《引用・参考文献》
木村 周「キャリアコンサルティング 理論と実際(5訂版)」 平成30年10月(一般社団法人雇用問題研究会)