キャリアコンサルティング ―その過去、現在、未来―

第5回

「厚生労働省によるキャリアコンサルティングに必要な能力の見直し」と「民間試験機関等による資格取得者の実態調査の実施」

今回は、キャリアコンサルティングが実施されて数年間の状況を、厚生労働省委員会による必要な能力の見直しと、平成18年新たに設置されたキャリアコンサルティング協議会が初めて行った全国調査の内容について解説する。

1 キャリアコンサルタントに必要な能力の見直し

厚生労働省に設置された「キャリアコンサルティング研究会」は、平成14年以来実施されてきた民間キャリアコンサルタント試験機関などによるキャリアコンサルティングの実施状況、その結果明らかになった諸問題などを検討し、平成18年その報告書を公表した。その要点は、次のとおりである。

1)キャリアコンサルタントの養成、能力評価、実践活動を、より実情に即したものとすること。

2)キャリアコンサルタントの活動は、単に個人に対する相談支援のみではないことを踏まえ、環境への働きかけ等幅広い役割を明確にすること。

3)キャリアコンサルタントの資質確保の観点から、追加すべき内容や強調すべき内容を明確にすること。

4)能力体系の中で、「理解していること(知っていること)」と、「できること」を明確に区別すること。そのうえで、「理解していること」その程度を示すこと。

2 標準レベルキャリアコンサルタントの養成と能力評価システムの関係

下記のような標準レベルキャリアコンサルタントの水準等を明らかにした。

1)標準レベルキャリアコンサルタントとは、多くのキャリアコンサルタントが到達でき、第1次の目標として設定されるレベルである。

2)標準レベルのキャリアコンサルタントは、「エントリー資格(オープンな入り口」)の資格である。

3)標準レベルのキャリアコンサルタントは多様な分野での経験、専門性を持っていることを、国が位置づけたものである。

4)標準レベルキャリアコンサルタントの具体的教育、認定、実施や活動に当たっては次のことが重要である。

・社会全体のニーズに対応できる水準に過不足のない能力

・試験期間ごとの評価水準共通性、幅の調整

・労働力需給統制、企業、学校教育の領域別最低限のニーズに答える能力

・コンサルタントとしての資質の確保、倫理の認識と行動

3 標準レベルキャリアコンサルタントの能力要件の見直しのポイント

上記2の考え方に立って、能力要件の見直しを、「補強が必要とされる要素」と「政策的要請により必要とされる要素」の側面から、次の点を指摘した。

・職業能力開発に関する理解とその実践

・メンタルヘルスに関する理解とその実践

・相談実施において必要なスキル、カウンセリングスキル、グループアプローチスキル、相談過程全体のマネジメントスキル

・キャリア教育(学校段階におけるキャリア形成支援)の推進、ライフステージ、発達課題に関する理解、グループアプローチスキル

・キャリア形成、キャリアコンサルティングに関する教育・普及活動

・自立に困難を抱える若者に対する支援、ライフステージ発達課題に関する理解、グループアプローチスキル、キャリア形成、キャリアコンサルティングに関する教育普及活動

・ジョブカードを活用したキャリアコンサルティング、キャリアシートの活用指導

4 キャリアコンサルタントの養成の進展

(1)キャリアコンサルティングの試験機関の公募とキャリアコンサルティング協議会の設立

平成14年11月キャリアコンサルタント試験機関の公募が行われ、慎重な審査の結果、7試験機関が指定された。その後平成28年4月現在13機関に拡大され、それらの団体による「キャリアコンサルティング協議会」が設置されている。

(2)キャリアコンサルティング各取得者の状況

1)キャリアコンサルティング資格取得者の状況

キャリアコンサルティング協議会は、平成18年10月初めてキャリアコンサルタントの活動状況について全国調査(全国17,326人、回収率20%)を行った。その結果は下記のとおりである。

a キャリアコンサルタントは男性58.2%、女性41.8%、年齢は40歳代、50歳代ともに3割、30歳代2割である。住所は関東4割、近畿、中部ともに15%~17%で都会に集中している。

b 職務の内容は、独立したコンサルタント(19.4%)、人事労務、能力開発(2.3%)、営業・マーケティング(7.4%)、教師・教員(4.5%)、経営・企画(4.3%)、職名をあげていない者(25%)

c 資格取得前後の活動状況は、前からキャリアコンサルティングに関連した仕事をしており、今もしている(42.1%)、前からも、今もしていない(28.0%)、今はしている(23.3%)で、65%が何らかのキャリアコンサルタント活動をしている。

d 活動形態は、非正規社員として組織内で(26.3%)、正規社員で組織内で(25.6%)、正規社員として専任で(14.5%)、ボランティアで(8.0%)、専業自営で(6.4%)

e 主な活動の場所は、公的就職支援機関(30.3%)、企業内(24.3%)、民間就職支援機関(17.6%)、大学、高専などの教育機関(13.8%)、NPO、ボランテイアなど地域で(6.8%)

f 1月あたり平均活動日数は、1~5日程度(42.4%)、16~20日程度(19.8%)、21~25日程度(13.9%)、6~12日程度(12.4%)

g 活動収入は、0円(29.2%)、1円~10万円(24.4%)、20万~30万(18.4%)、10万~20万円(15.8%)

2)キャリアコンサルトとして課題と感じること

調査対象となったキャリアコンサルタントたちは、調査の中で課題と感じることを次のように述べている。

a 自分の力量が十分ではない(41.7%)

b 相談・支援を行う環境(場所)が整っていない(38.4%)

c キャリアコンサルタントがよく知られていない(41.3%)

d 組織内の立場や権限、受け持ち範囲が明確でない(31.6%)

e キャリア支援に対する関係者間の連携が難しい(30.2%)

f 組織のトップの理解が十分ではない(26.2%)

g 現場の管理者の理解が十分でない(26.2%)

h クライエントが消極的だったり、相談に来るのをためらう(26.0%)

平成13年、職業能力開発促進法に基づきキャリアコンサルティングが開始されて16年、キャリアコンサルタントが5万人にも及ぼうとする今日、重要な課題が当時すでに指摘されていることに驚きを感じる。

連載第5回は、キャリアコンサルティング開始後数年間の時点で、政府によって行われた「キャリアコンサタントに必要な能力の見直し」、試験機関によって自主的に行われた「実態調査」の要点をまとめた。


《引用・参考文献》

木村 周「キャリアコンサルティング 理論と実際(4訂版)」 平成28年5月(一般社団法人雇用問題研究会)

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