第17回 現在政府で検討されている職業紹介事業の見直しについて
現在、政府において職業紹介事業に関し、主として、規制緩和の観点からその見直しの作業が進められているところであることから、その検討状況を説明し、職業紹介事業者の方々の今後の業務運営の参考としたい。
1 検討の経緯
(1)「規制改革実施計画」(平成26年6月24日 閣議決定)(抄)
政府においては、平成26年6月24日、労働者が活躍できる職場を円滑に見出せる環境の整備を図る観点から、有料職業紹介事業等の規制の見直しに係る事項について、重点的に取り組むとの方針を「規制改革実施計画」に盛り込み、具体的には、
① 多様な求職・求人ニーズに対し業態の垣根を越えて迅速かつ柔軟にサービスを提供することを可能とする制度の在り方
② IT化等による新しい事業モデル・サービスに対応した制度の在り方
③ その他有料職業紹介事業等をより適正かつ効率的に運営するための制度の在り方
について検討することとなった。
(2)「雇用仲介事業の規制の再構築」に関する意見(平成27年1月28日規制改革会議)(抄)
上記の政府方針を受けて、規制改革会議における検討が行われ、平成27年1月28日、同会議から、「雇用仲介事業の規制の再構築」に関する意見が提出された。
(注)雇用仲介事業とは、職業紹介、労働者派遣、委託募集、求人広告・情報提供等の就労マッチングを担う事業全般を指す。
同意見では、改革の3本柱とその具体策として、以下のような提案を行っている。
① 事業者間の連携・協業を促進し、利用者の立場に立ったマッチングを実現する規制改革として、
イ 職業紹介事業における「一事業者主義」の撤廃等―職業紹介事業者同士が連携・協業してマッチングを進め、役割と責任に応じた手数料徴収が可能となるよう、「一事業者主義」の撤廃を含めた制度の再構築を図る。
ロ 職業紹介事業者への求職者・求人者紹介に関する許可不要の明確化―職業紹介事業者があっせんに関する責任を負う前提であれば、求職者や求人者を職業紹介事業者に紹介し対価を得る行為について、職業紹介事業の許可は不要であることを明確化する。
② 時代の変化に即した規制体系への抜本的改革として、
イ IT化等を契機とした職業紹介の再定義と規制の明確化―
ⅰ 適切な情報の提供や個人情報保護など、求人・求職情報の取扱いに関して、職業紹介許可事業者以外も含めた全ての事業者が守るべき必要最小限の共通ルールを整備する。
ⅱ 提供情報の選別やリコメンドなどを含め、あっせん・職業紹介プロセスにおける行為は原則規制の対象から外す。
ⅲ 労働条件明示や契約内容の確認など、適切な雇用契約の締結に関する職業紹介許可事業者の仲介責任を明確化し、必要となるルールを整備する。
ロ 事業所配置・責任者配置規制の抜本的見直し―
事業所外や非対面による職業紹介行為をより柔軟に行えるよう制度の見直しを行う。その際、個人情報や求職者保護については別の手段で担保する制度へと抜本的に改める。また事業所ごとの責任者配置義務についても、その役割と資格の在り方を見直す。
ハ 国外にわたる職業紹介に関する届出規制の見直し―
海外在留邦人等への職業紹介に関する届出規制を撤廃する。また、国内在住者が海外での就業を希望する場合の紹介についても、手続きを簡素化する。
ニ 求人・求職情報の管理業務に関する規制の簡素化等―
サービスの実態に即して効率的な情報管理が行われ、迅速なマッチングに役立つよう管理規制の見直しを行う。
ホ 労働条件明示等の諸手続きにおけるIT活用に関する総見直し―
労働条件明示について、職業紹介事業者のWEBサイトにおける閲覧やダウンロードによる方法を可能とする
③ 縦割りとなっているサービス法制の垣根の解消―
ⅰ 個人情報保護に配慮した上で、職業紹介と労働者派遣に関する求人・求職情報の一元的な情報管理を可能とする
ⅱ 職業紹介事業と他の雇用仲介事業との規制の整理・統一化
(3)雇用仲介事業等の在り方に関する検討会の設置(平成27年3月31日)
上記「規制改革実施計画」において、その指摘事項については平成26年度に検討を開始するとされていることを踏まえ、厚生労働省に、その具体化の検討を行うため、平成27年3月31日、雇用仲介事業等の在り方に関する検討会が設けられ、現在、検討が進められているところである。
なお、規制改革会議から提出された「「雇用仲介事業の規制の再構築」に関する意見」については、同検討会では、議論の参考意見としての扱いとされており、縛られるものではないとの考えが事務局から表明されている(第1回)。
2 雇用仲介事業等の在り方に関する検討会における検討状況
(1)雇用仲介事業等の在り方に関する検討会は、第1回の検討会で、主な論点と検討会のスケジュールについて、議論を行ったが、その内容は次のとおりである。
・主な論点としては、「規制改革実施計画」で指摘され3点について、
①の点については、職業紹介事業と周辺的な事業との関係の整理と時代の変化に対応した規制の見直し
②の点については、IT化の進展への対応と国際化の進展への対応
③の点については、求職者等の保護の強化等
に関し、議論を進めることとされた。
・検討会のスケジュールについては、第2回以降関係者からヒアリングを行うこととされた。
(2)その後、関係者からのヒアリングを行うなど、検討会は、現在(平成27年12月8日)まで8回開催されており、第7回(平成27年11月13日)の検討会では、事務局から提出された「今後の議論の進め方」―平成28年明けまでに個別の論点(① 需給調整システムにおける民間雇用仲介事業の在り方、② 職業紹介事業について、③ 職業紹介事業以外の需給調整システムの在り方、④ その他)について順次議論し中間整理を行った上で、来春にかけて再度関係者からのヒアリングを行い、来春以降取りまとめに向けた議論を行う―をもとに議論がなされたところである。
第8回(平成27年11月25日)の検討会では、第7回での議論を踏まえ、「ご議論いただきたい事項」が事務局から示され、今後これに沿って、検討がなされることになっている。
事務局から示された「ご議論いただきたい事項」は、次のとおりである。
論点① ハローワークと民間職業紹介事業者の役割分担―役割分担とルールの在り方
論点② 業態ごとのルール―兼業する場合のルールの在り方
・欠格事由、許可基準
・求人情報・求職情報の管理
論点③ IT化の進展と多様なビジネスモデルの登場を踏まえた職業紹介と他の事業との区分―職業紹介の定義
・職業紹介に該当するか否か疑義が生ずる事業
・その他の事業(あっせんがない事業)
なお、第9回(平成27年12月11日)の検討会では、個別の論点についての検討として「職業紹介事業について」議論がなされることが予定されている。
3 今後の動き
民間職業紹介事業の今後の在り方については、上記のように、今後職業安定法の抜本的な改正も視野に入れた検討が進められることになると考えられるので、職業紹介事業者の方々としては、その動きに十分注意を払う必要があると思われる。
なお、検討会の今後の動きについては、必要に応じ、この場で説明を行うこととしたい。
(注)雇用仲介事業等の在り方に関する検討会の詳細な検討状況については、次の厚生労働省のホームページを参照
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-syokuan.html?tid=256560