職業紹介をめぐる法的な問題等について

第25回 「職業紹介事業に関する制度改正について」と

「改正個人情報保護法の施行に向けて」の改訂について

職業紹介事業者の方々の業務の参考となるよう、第22回「改正個人情報保護法の施行に向けて」及び第23回「職業紹介事業に関する制度改正について」を、厚生労働省による「業務運営要領」の改正(平成29年7月)や個人情報保護委員会からの「改正個人情報保護法の基本」の公表(平成29年6月)等その後の状況を踏まえ改訂したので、その内容を紹介することとしたい。

Ⅰ 職業紹介事業に関する制度改正について

平成29年3月31日、職業紹介事業の制度改正を含む職業安定法の一部を改正する法律が成立し、同日公布され、また関係の省令・告示等の改正も行われるとともに、平成30年1月1日から施行される「業務運営要領」も出されたので、職業紹介事業者の方々の今後の業務運営の参考として、今回の職業紹介事業の制度改正の概要を紹介することとする。

1 制度改正の概要

制度改正の概要は、次のとおりである。

(1)職業紹介事業者に係る欠格事由の追加(平成29年4月1日施行)

・労働・社会保険関係法令違反で罰金刑に処せられ5年を経過しない者

・職業紹介事業の許可の取消し等の処分に係る聴聞があった日から当該処分をする日等までに職業紹介事業の廃止の届出をした者で当該日から5年を経過しない者

・職業紹介事業の許可を取り消された法人の役員であった者で当該取消し等の日から5年を経過しない者

・暴力団員又は暴力団員で無くなった日から5年を経過しない者

等を職業紹介事業者に係る欠格事由として追加する。
 なお、4月1日前に許可を受けて職業紹介事業を行っている者についての許可の取消し・事業停止命令に関しては同日前に生じた事由については、なお従来どおりとされる。

(2)公共職業安定所による職業紹介事業者の業務情報の提供等(平成29年4月1日施行)

・公共職業安定所と職業紹介事業者は、求職者が希望する地域においてその能力に適合する職業に就くことができるよう、職業紹介に関し、相互に協力するよう努めることとされた。

・公共職業安定所は、求人者又は求職者に対し、職業紹介事業者が公共職業安定所による提供を求める(7)により職業紹介事業者が情報提供する事項、その紹介により就職した者のうち移転費(注Ⅰ-1)の支給を受けたものの数*その他職業紹介事業の業務に係る情報を提供することとされた(注Ⅰ-2)。

(3)許可申請時の添付書類の改正等

ア 許可申請時の添付書類の改正(平成29年4月1日施行)

・代表者、役員及び職業紹介責任者の「住民票写し」は本籍地を記載したものとすること(更新許可の場合は、従前の届出等において提出がなかった場合に限る)

・職業紹介責任者に職業紹介事業者に係る欠格事由と同様の欠格事由を設けること

・職業紹介事業の許可有効期間の更新に際して、職業紹介責任者に係る職業紹介責任者講習の受講証明書の写しを添付するものとすること

・特別の法人が無料の職業紹介事業を行う際の届出について、役員の住民票の写し及び履歴書の添付を不要とすること

イ 許可基準の改正(平成29年5月30日施行)

(ア)許可基準のうち事業所に関する要件について、現行の面積要件(概ね20㎡)に代えて、求人者及び求職者のプライバシーを保護するための次の措置を講ずることとすること(なお、当分の間、現行の面積要件も可とする)

・職業紹介の適正な実施に必要な構造・設備(個室の設置、パーティション等での区分)を有すること

・他の求人者又は求職者と同室にならずに対面紹介を行うことができるような措置(予約制、貸部屋の確保等)を講ずること(他の用途への使用を許可取消しの対象とする)

・専らインターネットを利用すること等により、対面を伴わない職業紹介を行うこと(対面紹介を行ったときは許可取消しの対象とする)
 なお、事業所外での事業実施について、職業紹介責任者が当該事業所外にいる場合等で、プライバシー保護や個人情報保護の措置が実施される場合は、可能とすること

(イ)職業紹介事業と労働者派遣事業を兼業する場合の個人情報等の管理について、現行制度(職業紹介に関する情報と労働者派遣に関する情報の相互利用の禁止)を維持しつつ、別個の管理を不要とすること

ウ 許可の有効期間の更新の申請期限(平成29年10月1日施行)

当該許可の有効期間が満了する日の3か月前までに提出しなければならないこととすること。
 具体的には、次のようになる。

・有効期間が10月31日まで―30日前まで

・有効期間が11月1日から12月31日まで―10月1日まで

・有効期間が平30年1月1日以降―3か月前まで

(4)職業紹介責任者の職務の追加等(平成30年1月1日施行)

・職業紹介責任者の職務に、他の従業員に対する職業紹介の適正な遂行に必要な教育(労働関係法令等)を追加する。

・「厚労省人事労務マガジン(メールマガジン)」に登録を義務づける。

・職業紹介責任者は、過去5年以内に職業紹介責任者講習を修了((5)の理解度試験の合格が要件)している者のうちから選任しなければならないこととする。

(5)職業紹介責任者講習の充実・理解度試験の実施(平成30年1月1日施行)

・新規受講者のみ必修となっている科目を受講者全員に必修とする。

―現行の新規講習と継続講習の区分を廃止。

・講習内容に、労働関係法令等の改正動向、他の従業員に対する教育方法等を追加する。

・講習の理解度試験を実施し、その合格を講習修了の要件とする。

―平成30年1月1日から1年余(31年3月31日まで?)は、試行期間として、試験は実施されるが、合格不合格の判定は行われないもよう。試験問題は、厚労省が作成した問題から講習実施機関で10問選択、8割以上で合格、再試験を認める方向。

・職業紹介責任者講習は、職業紹介事業の業務の適正な遂行のために必要な知識を習得させるための講習とし、次の基準を充たすものとする。

a 施設、設備、講習の実施方法その他の講習に関する事項が講習の適正かつ確実な実施に適合したものであること

b 講習機関の経理的及び技術的な基礎が講習の適正かつ確実な実施に足るものであること

(6)取扱職種の範囲等の明示事項の追加(平成30年1月1日施行)

明示事項として、次の事項を追加する。

イ 返戻金制度(その紹介で就職した労働者が早期に離職したことその他これに準ずる事由があった場合に手数料の全部又は一部を求人者に返戻する制度その他これに準ずる制度)に関する事項(返戻金制度を設けることが望ましいとされている)

ロ 返戻金制度に関する事項について、事業所内の一般の閲覧に便利な場所への書面での掲示(求人者及び求職者への明示)

ハ 求職者に明示する手数料に関する事項として、求職者から徴収する手数料とともに、求人者から徴収する手数料に関する事項の明示

(7)職業紹介事業者によるその業務に関する情報提供の義務化(平成30年1月1日施行)

職業紹介事業者は、次の業務に係る実績を厚生労働省の「人材サービス総合サイト」で情報提供しなければならない(また、必要に応じ事業者のホームページ等による提供)。

―なお(公社)民紹協及び(公社)看家協会では、これに関連する入力・掲載に関する事務支援を行うことを検討中。また、具体的記載例は、(公社)民紹協の会員専用ホームページに掲載されている。

・就職者の数(注Ⅰ-3)及びそのうちの無期雇用就職者の数(注Ⅰ-4)、無期雇用就職者のうち6か月以内に離職した者(解雇離職者を除く)の数(注Ⅰ-4)等(いずれも原則として前年度及び前々年度の総数)

なお、職業紹介事業者は、無期雇用就職者のうち解雇者の数の確認のため、求人者に必要な調査を行うこととし、求人者はこの調査に可能な限り協力することが求められること(注Ⅰ-5)

・手数料に関する事項

・返戻金に関する事項

なお、求人者、求職者等が職業紹介事業者を選択する際に参考となる資料(職種ごと、地域ごと等の就職の状況、離職理由等)も提供することが望ましいこと。

(8)職業紹介事業者間の業務提携等―(平成30年1月1日施行)

ア 現行の取扱いを前提に、職業紹介事業者が他の複数の職業紹介事業者との間の業務提携が可能であることを明確化したうえで、次のとおりの取扱いとすること。

・従事すべき業務の内容等の明示義務は、原則として、求職者から直接求職の申込みを受けた職業紹介事業者が履行すべきものとし、また、求人求職管理簿の備付け・記載並びに職業紹介事業報告及び人材サービス総合サイトを利用した情報提供義務は業務提携を行う職業紹介事業者間で取り決めた一の事業者が行うこと

・複数の職業紹介事業者を提携先とする場合、求人者又は求職者が提携先ごとに同意又は不同意の意思を示すことができるようにし、一度にまとめて求人者又は求職者の同意を求めること(当面提携先の数は10とすること)を可能とすること

・求人者又は求職者の同意を求める際に提示する提携先に関する情報として、(7)の業務に係る実績、また必要に応じ職業紹介事業の実施地域、就職件数の多い職種、年齢、賃金及び雇用形態等を提示すること

・個人情報の適正な管理(正確かつ最新のものに保つための措置、紛失・破壊及び改ざんを防止するための措置等)について、より一層的確に対応すること

・手数料は、あっせんを行う職業紹介事業者の手数料の範囲内とし、徴収した手数料を提携した職業紹介事業者間で事後的に配分することは、差し支えないこと

・職業紹介事業者以外の者から職業紹介事業者に対し、求人申込みの意向を持つ求人者がいる旨の情報提供を行うことは問題ないことを明確化する。

(9)苦情処理、就職した労働者の早期離職への対応(平成30年1月1日施行)

・求職者からの苦情のみならず、求人者からの苦情及び職業紹介後の苦情も対象とした迅速・適切な処理に係る体制の整備(相談窓口の明確化等)及び改善向上に努めること

・職業紹介事業者は、その紹介で就職した者(期間の定めのない労働契約者に限る)について、2年間、転職の勧奨を行ってはならないこと

(10)職業紹介事業者及び求人者による従事すべき業務の内容等の明示(平成30年1月1日施行)

ア 職業紹介事業者及び求人者は、求職者等に対し、職業安定法5条の3第1項により明示すべき従事すべき業務の内容等(従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件をいう)については、可能な限り速やかに明示しなければならないこと

―原則として、求職者等と最初に接触する時点までに従事すべき業務の内容等を明示すること
従事すべき業務の内容等の一部を別途明示する場合は、その旨を併せて明示すること

イ 職業紹介事業者及び求人者が、職業安定法5条の3第1項又は第2項により明示が必要な従事すべき業務の内容等に、次の事項を追加すること

・裁量労働制(専門業務型、企画業務型)の場合には、その旨の明示

・固定残業代をとる場合は、その計算方法(固定残業時間及び金額を明示)、固定残業代を除外した基本給の額、固定残業時間を超える時間についての追加割増金の支払い等の明示

・期間のある労働契約を締結する場合は、それが試用期間の性質を有するものであっても、試用期間終了後の従事すべき業務の内容等ではなく、試用期間に係る従事すべき業務の内容等を明示すること

ウ 求人者は、従事すべき業務の内容等の変更等に係る明示については、次のとおりとすること(平成30年1月1日以後に申し込まれた求人から適用される)。
 なお、学校卒業見込者等については、従事すべき業務の内容等の変更等は不適切である等一定の配慮が必要であること

・明示した従事すべき業務の内容等を変更する場合は、変更する従事すべき業務の内容等の明示

・当初の明示において一定の範囲をもって明示した従事すべき業務の内容等を特定して提示しようとするときは、特定する従事すべき業務の内容等の明示

・明示した従事すべき業務の内容等を削除する場合は、削除する従事すべき業務の内容等の明示

・従事すべき業務の内容等を追加する場合は、追加する従事すべき業務の内容等の明示
なお、上記の明示は、求職者が変更内容等を十分理解できるよう適切な明示方法をとること

―変更内容等との新旧対照表によることが望ましいが、労働条件通知書の変更内容等に下線を引くなどの方法も可能であること
また、当初明示の従事すべき業務の内容等はそのまま労働契約の内容となることが期待されていること、また安易に変更、追加等をしないこと

エ 求人者は、ウによる従事すべき業務の内容等の変更等があった場合には、求人票等の内容を検証し、修正等を行うべきであること

オ 書面で明示すべき従事すべき業務の内容等として、次の事項を追加すること

・試用期間に関する事項

・労働者を雇用しようとする者の氏名又は名称に関する事項

・労働者を派遣労働者として雇用する者にあっては、派遣労働者として雇用する旨

カ イからウまでの明示は、試用期間中と試用期間満了後の従事すべき業務の内容等が異なるときはそれぞれの従事すべき業務の内容等を明示すること

キ 求人者は、求職者に明示された従事すべき業務の内容等に関する記録を当該明示に係る職業紹介が終了する日(職業紹介が終了する日以降に労働契約を締結する場合は、労働契約締結日)まで保存しなければならないこと

(11)求人者への指導(平成30年1月1日施行)

求人者を、職業安定法に基づく指針、指導及び助言、申告、報告徴収及び検査の対象並びに(16)の場合に勧告及び公表の対象とすること

(12)適正な宣伝広告(平成30年1月1日施行)

・職業安定機関その他公的機関と関係を有しない職業紹介事業者は、これと誤認させる名称を用いてはならないこと

・不当に求人者又は求職者を誘引し、合理的な職業選択を阻害するおそれがある不当な表示をしてはならないこと

・求職の申込みの勧奨については、職業紹介事業者が求職者に金銭等を提供して行うことは好ましくないこと

(13)求人受理の拒否事由の拡大(平成29年3月31日から起算して3年以内の政令で定める日から施行)

ア 次の事由を追加

① 求人者が、労働関係法令違反で処分・公表等の措置を受けた場合

② 求人者が、暴力団員、役員に暴力団員がいる法人、暴力団員がその事業活動を支配する者等に該当する場合

③ 求人者が、正当な理由なくイの求めに応じない場合

イ 求人者は、職業紹介事業者からのア①・②に該当するか確認するため求められた報告・資料の提出に、正当な理由がない限り応じなければならないこととする。

(14)取扱職種の範囲等の届出等により取扱職種の範囲等を限定することを認める事項の例示として、賃金を追加する―(平成30年1月1日施行)

―例、月給30万以上、時給1,200円以上の求人等

(15)求人者を守秘義務・個人情報保護義務の規制対象化(平成30年1月1日施行)

求人者についても、職業紹介事業者と同様、守秘義務(30万円以下の罰金)・個人情報保護義務の規制対象とする。

(16)指導監督(平成30年1月1日施行)

ア 職業紹介事業者について、法令違反があった場合には、厳正に行政処分等を行うこと

イ 求人者について、次の場合に、必要な措置を勧告できることとし、従わなかったときはその旨公表できることとすること

① 従事すべき業務の内容等の明示義務違反

② (10)イに係る明示義務違反

③ (13)イに係る職業紹介事業者の求めに応ずる義務違反

・上記3事項に違反に対し指導又は助言を受けたにもかかわらず、なお違反のおそれがあるとき

(17)罰則(平成30年1月1日施行)

虚偽の条件を呈示して、職業紹介事業者へ求人の申込みを行った者を新たに罰則(6月以下の懲役又は30万円以下の罰金)の対象とする。

(18)その他

平成29年4月1日から平成30年3月31日までの間の事業報告書は、現行の様式で提出する。
 なお、新しい事業報告書には、次の項目が追加される。

・4活動状況(国内)に「④離職者数」の欄を設ける -前々年度の4月から前年の3月末までに間に就職した無期雇用者のうち6か月以内に離職した者の数等

・54活動状況「(国外)に⑦就職者数及び⑧離職者数」の欄を設ける

・「8返戻金制度」及び「9従業員教育」の欄を設ける

2 今後の対応

上記のように、職業紹介事業及び職業紹介事業者、求人者に対し、広範な規制あるいはその緩和がなされることとなっており、特に職業紹介事業者としては、職業紹介責任者講習の改正、その業務に関する情報提供の義務化、従事すべき業務の内容等の明示義務、求人受理の拒否事由の拡大に関する改正については、今後の業務を適正に進めていくうえで、特に留意する必要があると考えられるので、その具体的な対応に関し、先般厚生労働省から示された「業務運営要領」の改正内容(求人受理の拒否事由の拡大はまだ示されていない)を踏まえることが大切であると考えられる。

(注Ⅰ-1)職業紹介事業者の紹介による就職者も移転費の支給対象となる(平成30年1月1日施行)。

(注Ⅰ-2)一部の労働局(東京等)で既にそのホームページへの掲載が、また全国の労働局でその掲載(ハローワークでの配布)の募集が行われている。

(注Ⅰ-3)平成28年度の総数から適用

(注Ⅰ-4)平成30年度の総数から適用

(注Ⅰ-5)平成30年度の総数から適用


(参考1)厚生労働省パンフレット

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000171018_2.pdf

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000171017_4.pdf

(参考2)改正全体の詳細については、厚生労働省「業務運営要領(30年1月1日施行)」を参照のこと

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000172486.html

(注)改正個人情報保護法施行に伴う整備(平成29年5月30日施行)

改正個人情報保護法の施行に伴う「業務運営要領」の改正については、下記Ⅱの「改正個人情報保護法の留意点について」を参照のこと



Ⅱ 改正個人情報保護法の留意点について

平成17年から施行された個人情報保護法は、その後の事業者等を取り巻く様々な状況変化を受けて改正され、その改正法が平成29年5月30日から全面施行されたところである。
 この改正は、職業紹介事業者の方々に大きな影響を及ぼすものであるので、その内容について解説してみることとする。

1 改正の背景

個人情報保護法は、制定後10年余を経過し、①個人情報(参考1)に該当するかどうか判断することが困難ないわゆる「グレーゾーン」が拡大してきたこと、②パーソナルデ-タ(「個人情報」に限定されない、個人の行動・状態に関するデータ)を含むビッグデータの適正な利活用ができる環境の整備が必要となってきたこと等の環境変化に対応し、消費者の個人情報保護を図りつつ、事業者によるパーソナルデ-タの円滑な利活用を促進させ新産業・新サービスを創出するための環境整備を行うことを目的に改正されたものである。

2 改正のポイント

(1)個人情報保護委員会の新設(平成28年1月1日施行)

個人情報の保護に関する独立した機関として、特定個人情報保護委員会を改組して、新設された(特定個人情報(マイナンバー)関係も取り扱うため、マイナンバー法施行に併せて設立された)。

(2)個人情報の定義の明確化(以下、平成29年5月30日施行)

個人情報の定義を明確化し、個人識別符号(参考1②)が含まれるもの―①特定の個人の身体的特徴を変換したもの(例:顔、指紋、静脈の形状等の認識データ等)、②対象者ごとに異なるよう役務の利用・商品の購入・書類に付される符号(例:旅券番号、免許証番号、基礎年金番号等)を個人情報に含むものとした(参考1)。

(3)要配慮個人情報についての取扱いの厳格化

要配慮個人情報として、人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実、身体・知的・精神障害があること、健康診断等の結果・保険指導・診察調剤情報、被疑者・被告人として逮捕・捜査等の手続きが行われたこと及び非行少年・その疑いのある者として保護処分等の手続きが行われたことが含まれる個人情報については、本人の同意を得て取得することを原則義務化し、本人の同意を得ない第三者提供の特例―オプトアウト(下記3(5)②参照)を禁止した。

(4)小規模取扱事業者に対する適用

これまでは個人情報保護法が適用されていなかった5,000人分以下の個人情報しか取り扱わない小規模取扱事業者に対しても適用することとした。

(5)利用目的の変更要件の緩和

当初の利用目的から新たな利用目的への変更の要件を緩和した。

(6)オプトアウト手続きの厳格化

事業者は、オプトアウト手続きによって個人データ(参考2)を第三者に提供しようとする場合、データ等の項目等を個人情報保護委員会へ届け出なければならないこととし、同委員会はその旨を公表するものとした。

(7)トレーサビリティ(追跡可能性)の確保

個人データを提供した事業者は、その受領者の氏名等の記録を一定期間(1年(本人の同意の下での提供の場合)又は3年)保存しなければならず、また個人データを第三者から受領した事業者は、提供者の氏名やデータの取得経緯等を確認し、一定期間(1年又は3年)その記録を保存しなければならないこととした。

―なお、「本人に代わって提供」と整理できる場合は、確認・記録義務はかからない(例―本人から、取引の媒介を委託された事業者が、相手先の候補となる他の事業者に、価格の妥当性等の検討に必要な範囲の情報を提供する場合等)

(8)個人情報データベース等不正提供罪の新設

個人情報データベース等(参考3)を取り扱う事務に従事する者又は従事していた者が、不正な利益を図る目的で個人情報データベース等を提供し又は盗用する行為を処罰する規定を新たに設けた。

(9)開示請求権

本人の開示、訂正、利用停止の求めは、裁判上も行使できる請求権であることを明確化した。

(10)個人情報保護委員会の権限の強化

現行の主務大臣の有する権限を個人情報保護委員会に集約し、立入検査の権限等を追加した。

(11)その他

匿名加工情報(特定の個人を識別することができないように個人情報を加工したもの)の取扱いに関する規律、国境を越えた法の適用と外国執行当局への情報提供(日本に居住する本人から個人情報を直接取得した外国事業者についても法を適用・個人情報保護委員会による外国執行当局への情報提供が可能に)、外国事業者への第三者提供、認定個人情報保護団体等について規定した。

3 職業紹介事業者が守るべきルール

今回の改正により、すべての職業紹介事業者が個人情報取扱事業者(参考5)として個人情報保護法を遵守しなければならなくなったことから、職業安定法の規定も踏まえ、個人情報を取り扱う際に、特に職業紹介事業者が留意しなければならない点は、次のとおりである。
 なお、職業安定法は個人情報の保護対象を求職者に限定しているが、今回の個人情報保護法の改正により、すべての職業紹介事業者は、求職者に限らず、求人者の担当者や職業紹介事業者の従業者等の個人情報についても同法による保護を行わなければならないことに留意が必要である。

(1)個人情報を取得する際のルール

・取得時の利用目的の特定、通知・公表等
 職業紹介事業者は、個人情報を取り扱うに当たってはその利用目的を特定し、また、取得するに当たっては①取得前にあらかじめその利用目的を公表する、又は②取得後速やかにその利用目的を本人へ通知あるいは公表することが必要である。なお、書面により本人から直接取得する場合は、あらかじめ本人にその利用目的を明示する必要がある。この場合、求人申込書等により直接本人から個人情報を取得するときは、利用目的の通知等の対象とはならないが、アンケート調査票等の場合は、その対象となること(これらの書面には、個人情報の利用目的を併せて記載する等が望ましいこと)
 また、求人申込書には、求人者に提供される個人データに関する同意欄を設ける等により、あらかじめ求職者の同意を得ることが必要であること(この同意は、書面によることが望ましいこと)
 なお、利用目的としては、「職業紹介業務(求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあっせんする業務)」として特定すべきであり、その変更も基本的には想定されないものであること。また、職業紹介業務以外の目的での利用可能な場合でも、その利用目的をできる限り特定すること

・適正な手段による取得等
 職業紹介事業者は、偽りその他不正な手段によって個人情報を取得してはならず、また①「職業紹介事業者等指針(平11年労働省告示141号)」等で定められている人種,民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項(家族の職業・収入、本人の資産・負債等の情報、容姿・スリーサイズ等差別的評価につながる情報)、思想・信条(人生観、生活信条、支持政党)、信条に関する推知情報(購読新聞・雑誌、愛読書等)、労働組合への加入状況(労働運動、学生運動、消費者運動その他社会運動に関する情報)については原則取得することはできないとされていること、②上記①以外の要配慮個人情報については原則事前に本人の同意得て取得する必要がありかつオプトアウト手続きは禁止されていること、③オプトアウト手続きによって個人データを求人者等に提供しようとする場合、データ等の項目等を個人情報保護委員会へ届け出なければならず、同委員会からその旨が公表されることとされていることに留意する必要がある。

・利用目的の変更
 職業紹介事業者は、特定した利用目的の範囲内で個人情報を取扱わなければならず、その目的の範囲を超えて取扱う場合はあらかじめ本人の同意を得る必要がある。ただ、この点に関し、従前の規制が緩和され、変更前の利用目的に関連すると合理的に認められる範囲内であれば利用目的を変更できることとされたが、変更された目的を本人へ通知又は公表する必要がある。

(2)個人情報を保管管理する際のルール

・個人データは正確で最新の内容に保ち、利用する必要がなくなったときは、データを消去するように努めなければならない。

・個人データの漏洩や滅失を防ぐため、施錠できる引出しでの保管、セキュリテーソフトの利用やパスワードの設定を行うなど、事業の規模等に応じた適切な技術的措置等を取る必要がある。

・安全にデータが管理されるよう、従業員に対し適切な監督を行わなければならない。

(3)個人情報の取扱いに関する苦情

・職業紹介事業者は、個人情報の取扱いに関する苦情について適切・迅速な処理に努めなければならない。

(4)職業紹介事業者の持つ個人情報の開示・訂正・削除

・本人(求職者等)は、職業紹介事業者に対して、自分の個人情報の開示を請求することができ、職業紹介事業者は、その個人情報が保有個人データ(参考3)である場合には、第三者の利益を害する等の一定の場合を除き、原則として本人からの開示請求に応じなければならない。

・本人からの請求に応じて、保有個人データの内容に誤りがある場合には訂正・削除(「利用の停止等」及び「第三者への提供の停止」を排除していない)を、職業紹介事業者が個人情報保護法の義務に違反している場合には保有個人データの利用停止・消去等をする必要がある。

・保有個人データの利用目的や職業紹介事業者の名称等を継続的にHPに掲載するなど本人が知ることができる状態に置き、本人の求めに応じて、その本人の保有個人データの利用目的を通知しなければならない。

(5)第三者(求人者等)に提供する際のルール

・原則として、あらかじめ本人(求職者等の同意をとれば、職業紹介事業者は個人データを他の求人者等に提供することができるが、次の場合は、例外的に本人の同意がなくとも提供できる。

① ⅰ法令に基づく場合(警察から刑事訴訟法に基づく要請があった場合等)、ⅱ生命・身体・財産の保護に必要(患者情報を医師へ伝える場合等)であり、また公衆衛生・児童の健全育成に特に必要(児童虐待防止のための情報の共有等)であり本人の同意を得ることが困難な場合、ⅲ国の機関等へ協力する必要があり、かつ、本人の同意を得るとその遂行に支障を及ぼす恐れがある場合(統計調査に協力する場合等)

② 次の3点すべてを行って提供する場合(オプトアウト手続き。要配慮個人情報を提供する場合を除く)

・本人の求めに応じて、その本人の個人データについて、第三者への提供を停止することとしていること

・利用目的は第三者提供・提供される個人データの項目・提供の方法・本人の求めによる提供停止・本人の求めを受け付ける方法等をあらかじめ本人に通知、又は継続的にHPに掲載するなど本人が容易に知ることができる状態に置くこと

・本人に通知等した事項を個人情報保護委員会に届け出ること

(6)不正な流通が発覚した場合の漏洩元等の特定

・個人情報保護委員会が、以下の記録を調査することによって、漏洩元等を特定する(2(7)を参照)

・第三者(求人者等)提供時の記録等

―職業紹介事業者は、提供年月日、受領者の氏名等を記録し一定期間(1年(本人の同意の下での提供の場合)又は3年)保存しなければならない。なお、この点に関し、職業紹介事業者は、求人・求職管理簿を作成し、2年間保管しなければならないので、求人・求職管理簿の作成で、この義務を果たしたといえると考えられる場合が多いと思われる。

・第三者からの受領時の確認・記録等

―職業紹介事業者は、提供者の氏名等、その提供者が個人データを取得した経緯を確認するとともに、受領年月日、確認した事項等を記録し一定期間(1年又は3年)保存しなければならない。
なお、漏洩した場合の厚生労働大臣への報告は、廃止された(個人情報保護委員会への速やかな報告に努めるとされている)が、平成29年個人情報保護委員会告示1号等により対応することとされている。また、職業安定法に違反する場合には労働局からの指導・助言等の対象となる。なお、東京労働局の場合は、漏洩した旨の一報をお願いするとしている。

(7)国(個人情報保護委員会)による監督

・職業紹介事業者が、法違反をしていると疑われる場合には、国(個人情報保護委員会)は職業紹介事業者に対して、必要に応じて報告を求め、立入検査を行うことができ、その実態に応じ必要な指導、助言を行うほか、勧告・命令を行うことができる。
なお、職業安定法に違反する場合は、労働局による同法による指導、助言等の対象ともなりうる。

・職業紹介事業者が、国(個人情報保護委員会)からの命令に違反した場合には6月以下の懲役又は30万円以下の罰金が、虚偽の報告をした場合等には30万円以下の罰金が科される。

・個人情報データベース等を取り扱う事務に従事する者又は従事していた者等が、不正な利益を図る目的で個人情報データベース等を提供し、又は盗用した場合は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科される。

(8)その他

・個人情報保護法を踏まえた個人情報適正管理規程(個人情報の取扱者の範囲、その者の研修等教育訓練、個人情報の開示又は訂正・削除の取扱い、苦情処理を含む(参考5))の作成・改正が望まれる。

・個人情報の開示又は訂正等を求めた求職者に対する不利益取扱いは禁止されている。

4 おわりに

職業紹介事業者は、今後、個人情報保護法の規定を遵守するとともに、 職業安定法の個人情報保護に関する規定(平成30年1月1日からは求人者も職業紹介事業者と同様規制対象となる)も遵守する必要があることから、改正個人情報保護法の施行に伴って厚生労働省から出された職業安定法の取扱いを含む個人情報の取扱いに関する考え方(平成29年5月30日―従前の個人情報保護法の解説部分の削除が中心で、個人情報保護法に対する職業紹介事業者の対応については、原則個人情報保護法によるとして、その具体的対応はあまり示されていない)を踏まえた適切な対応に努めることが求められることとなるので、この点に十分留意して紹介業務を行う必要がある。


(参考1)個人情報とは

生存する個人に関する情報であって、

① 氏名、生年月日、住所等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合でき、それにより特定の個人を識別することができるものを含む)―例 データベース化されていない書面、写真、音声等に記載されているもの

② 個人識別符号(イ又はロ)が含まれるもの

イ 特定の個人の身体の一部の特徴を電子計算機のために変換した符号―顔、指紋、静脈の形状等の認識データ等

ロ 対象者ごとに異なるものとなるように役務の利用、商品の購入又は書類に付される符号―旅券番号、免許証番号、基礎年金番号等

なお、事実に関する情報(事実情報)だけでなく、従業員に対する人事考課等判断・評価に関する情報(評価情報)も対象となり、公知情報も含み、情報の真実性は問わない。

「秘密」とは、個人情報のうち、非公知かつ要保護性のある事実をいい、具体的には、本籍地、出身地、支持・加入政党、政治運動歴、借入金額、保証人となっている事実等が当たりうるとされている。

(参考2)個人データとは

個人情報データベース等(注)を構成する個人情報

(注)名簿、連絡帳のように、個人情報を含む情報の集合物であって、電子媒体・紙媒体を問わず、特定の個人情報を検索することができるように体系的に構成したもの

(参考3)保有個人データとは

個人情報取扱事業者が開示、訂正、削除等の権限を有する個人データ(6か月以内に消去することとなるものを除く)

―例 自社の事業活動に用いている顧客名簿、従業員等の人事管理情報、自治会名簿等

(参考4)個人情報取扱事業者とは

個人情報保護法上の義務規定を守らなければならない、個人情報をデータベース化して事業活動(営利・非営利を問わない)に利用している者のことをいう。その取り扱う個人情報の件数にかかわらず個人情報を取り扱うすべての事業者が該当する。

(参考5)厚労省作成の個人情報適正管理規程

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11650000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu/0000180101_18.pdf

を参照のこと

(参考6)個人情報保護委員会事務局作成の資料

・中小企業向けのチェックリスト

https://www.ppc.go.jp/files/pdf/personal_2902leaf_smallbusinesses.pdf

・中小企業向けの「改正個人情報保護法の基本」

https://www.ppc.go.jp/files/pdf/1706_kihon.pdf

を参照のこと

職業紹介をめぐる
法的な問題等について

■第1回
職業紹介の法的性格とその内容
について

■第2回
職業紹介、労働者派遣及び労働
者供給の相互関係

■第3回
職業紹介と消費者契約法等との
関係

■第4回
暴力団関係者からの求人・求職
申込みへの対応について

■第5回
職業紹介における個人情報保護
のあり方について

■第6回
紹介業者の善管注意義務について

■第7回
職業紹介における労働条件等の明示について

■第8回
紹介所と労働組合のかかわり

■第9回
手数料について

■第10回
ハローワークと求人者・求職者の職業紹介を巡る法的関係について

■第11回
事業譲渡、合併、会社分割等における紹介事業の許可等の取扱い

■第12回
固定残業代の記載がある求人票への対応について

■第13回
民法改正案の職業紹介業務への影響について

■第14回
最近の法改正を踏まえた適正な職業紹介業務の遂行について

■第15回
障害者雇用において職業紹介業者が留意すべき点について

■第16回
マイナンバー法施行に伴う職業紹介業者の留意すべき点について

■第17回
現在政府で検討されている職業紹介事業の見直しについて

■第18回
労働関係法令違反があった事業主からの新卒求人の取扱いについて

■第19回
地方分権を踏まえたハローワークの職業紹介等の改革について

■第20回
同一労働同一賃金と職業紹介上の留意点

■第21回
職業紹介事業に関する制度改正についての建議

■第22回
改正個人情報保護法の施行に向けて

■第23回
職業紹介事業に関する制度改正について

■第24回
働き方改革の概要について

■第25回
「職業紹介事業に関する制度改正について」と「改正個人情報保護法の施行に向けて」の改訂について

■第26回
民法改正の職業紹介業務への影響について

■第27回
紹介手数料不払い、求人者の倒産等への対応

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